#19 Bar at the Folies-Bergère

Bottles of Bass alongside the champagne in Edouard Manet's 1882 Bar at the Folies-Bergère
Bottles of Bass alongside the champagne in Edouard Manet's 1882 Bar at the Folies-Bergère

「笛を吹く少年」や「皇帝マキシミリアンの処刑」などで知られるフランス印象派の巨匠(※1) エドゥアール・マネが描いた「フォリー・ベルジェールのバー」。

1869年、パリ9区ロシェ通りに開業したミュージック・ホール、『フォリー・ベルジェール(Folies Bergère)」の中のバーを題材に1882年に描かれました。フランス最初のミュージック・ホールの雰囲気が随所に醸し出された作品として名高いようです。

 

ウェートレスの女性を中心に、シャンパンやビールなどのお酒が描かれ、背後はシャンデリアの下で大勢の客が食事をする風景が、鏡に映っている構図(※2)となっていますが、興味深いのは左右のビール瓶に描かれたラベルの図柄。赤い三角形にBassの文字がかすかに見てとれます。フランスといえばワインかシャンパンというのが相場ですが、19世紀のパリで、しかもイングランドのビールがあることには、ちょっとした驚きをおぼえました(ちなみに日本ではこの年に新橋−日本橋間の東京馬車鉄道(後の都電)が開通)。バス醸造所では、ボトリングする際の12カ条の品質管理規定というのがありますが、それが制定されたのが1880年。その2年後ということで、ボトリングされたBassが、このホールでも飲まれていたのでしょうか?

そう考えると品質管理という概念は、製品の普及のためには必要不可欠なもので、信頼と安心の証となるのは今も昔も変わらないといえます。そのおかげでBassは、その当時からグローバルなビールブランドとしてヨーロッパで認められたのではないかと推測されます。

 

なお、エドゥアール・マネはこの作品が完成した翌年、1883年に死去。現在この絵は、ロンドンのコントールド・ギャラリーに収蔵されているようです。

 

※1 マネが印象派であるかどうか諸説があるようです。

※2 鏡に映るウエートレスの後姿の不自然さや、男性と話しているはずなのに無表情な顔など、全体の構図のゆがみに込められたマネの創作意図も、調べてみると面白いですね。

http://stephan.mods.jp/kabegami/kako/A_Bar.html