日本で最初にビールを造ったのは三田藩(さんだはん:現在の兵庫県三田市)お抱えの蘭学者川本幸民といわれています。幸民は1853年にペリーが浦賀に来航した際、通訳として船内に乗り込みましたが、そこで振る舞われたビールにいたく興味を抱いたそうです。その後自宅にかまどを造り醸造に成功。元々が化学と物理に秀でており、翻訳したオランダ語の「化学新書」にビールの造り方が載っていたこと、また黒船騒ぎで西洋の進んだ技術を目の当たりにして意気消沈していた日本人が、西洋と同じものが造れることを証明し、自信を取り戻したいと考えたこともビール造りの一因だったようです。
当時の状況を考えると、上面発酵のエールであった可能性が高いのですが、そうやって造られたビールは、また格別だったのではないでしょうか。その後浅草の曹源寺にて幕末の志士や蘭学者を集め、試飲会も開いたようですが、おそらく集まった人たちの士気も大いに揚がったことでしょうね。
そしてこの幸民が造ったといわれているビールですが、兵庫県伊丹市の小西酒造によって2010年に「幸民麦酒」として復元されました。2010年が幸民生誕200年ということもあり、三田市から小西酒造に復元依頼があったため、「化学新書」の記述をもとに復元に挑み、そして成功したとのことです。
小西酒造のホームページで購入可能なので、一度飲んでみたいと思っていますが、興味のある方は「幕末のビール」、同じくお試しください。飲まれたらぜひインプレッションをお願いいたします。